AIコーディングツールで4つのアプリを作ってみた話 ― 試すことで見えてきた景色


目次

AIがコードを書いてくれる時代がやってきた

「プログラミングができなくても、AIがアプリを作ってくれる」

そんな話を聞いても、正直ピンとこなかった方も多いのではないでしょうか。私もその一人でした。

私のプログラミング経験といえば、Excel VBAをちょっと触ったことがある程度。Ubuntuなどの Linux環境は使い慣れていましたが、本格的なアプリ開発となると、まったくの未経験でした。

ところが2025年、AIコーディングツールは驚くほど進化しています。Claude Code、Codex CLI、Gemini CLI――これらのツールを使えば、ターミナル(黒い画面)に「こんなアプリを作って」と指示するだけで、AIが計画を立て、コードを書き、テストまで実行してくれます。

「本当にそんなことができるのか?」

半信半疑だった私は、実際に4つのアプリを作ってみることにしました。結果として、GUIアプリ、MCPサーバー、Webアプリ、そしてマルチプレイヤーゲームまで完成させることができたのです。

この記事では、その体験を通じて感じたこと、各ツールの違い、そして「試すこと」の大切さについてお話しします。


作った4つのアプリ

1. SQLiteView ― はじめてのGUIアプリ

リポジトリ: github.com/kwrkb/SQLiteView

最初に作ったのは、SQLiteデータベースを閲覧するためのデスクトップアプリです。

正直に言うと、これは「AIコーディングツールがどんな挙動をするのか知りたい」という動機で始めたプロジェクトでした。テーブルの一覧表示、SQLクエリの実行、結果のCSVエクスポートといった機能を持つ、Python製のGUIアプリケーションです。

私にとってはGUIアプリ開発は初めての経験。PyQt6というライブラリを使うことすら、AIに教えてもらいながらの作業でした。それでも、AIが提案してくれたコードをベースに試行錯誤を重ね、Windows・Ubuntu・macOSで動作するクロスプラットフォームアプリが完成しました。

技術スタック: Python / PyQt6 / SQLite / uv


2. worklog-mcp ― AIアシスタント用の作業記録サーバー

リポジトリ: github.com/kwrkb/worklog-mcp

「MCPサーバーを作ってみたい」

そんな単純な興味から生まれたプロジェクトです。MCP(Model Context Protocol)とは、AIアシスタントが外部ツールと連携するための仕組み。このサーバーを設定しておくと、Claude CodeやGemini CLIが作業内容を自動で記録してくれます。

機能自体はシンプルで、作業ログをSQLiteに保存し、キーワードや日付で検索できるだけ。「他にもっと良いものがありそう」と思いつつも、自分で作ってみることで仕組みを理解できたのは大きな収穫でした。

技術スタック: Python / MCP SDK / SQLite


3. map-reviews-timeline ― Googleマップの口コミをタイムライン表示

リポジトリ: github.com/kwrkb/map-reviews-timeline

Googleマップで口コミを見るのが好きで、ふと思ったんです。

「地図上のエリアに投稿された口コミを、X(旧Twitter)のタイムラインみたいに一覧で見られたら面白いのでは?」

むしろ公式Googleマップで実装してほしい機能ですが、待っていても仕方ないので自分で作ることにしました。

Google Maps JavaScript APIとPlaces API(New)を使い、地図上で選択した範囲内のスポットの口コミを取得。それをタイムライン形式で表示するWebアプリです。ダークモード対応、ソート機能、地名検索など、使っていて「あったら便利」と思う機能を次々と追加しました。

技術スタック: TypeScript / Vite / Google Maps API / Biome


4. Visual Echo ― AI画像伝言ゲーム

リポジトリ: github.com/kwrkb/visual-echo

4つ目は、多人数で参加できるゲームに挑戦しました。

「Visual Echo」は、AI画像生成を使った伝言ゲームです。プレイヤーは表示された画像を言葉で説明し、その説明文をもとにAI(Google Gemini)が新しい画像を生成します。この連鎖を繰り返すことで、最初の画像からどんどん変化(または奇跡的に維持)していく様子を楽しむゲームです。

非同期で参加できるので、リアルタイムに集まる必要がないのもポイント。ツリービューで画像の変遷を俯瞰したり、分岐した別の解釈を追いかけたりと、予想以上に遊べるものになりました。

技術スタック: Next.js 15 / TypeScript / Supabase / Google Gemini API / Tailwind CSS


3つのツールを使って感じた違い

今回のプロジェクトでは、Claude Code、Codex CLI、Gemini CLIの3つを試しました。※現在は各ツールとも大幅にアップデートされており、以下は開発当時の印象です。

Codex CLI ― 計画立てが丁寧

Codex CLIを使っていて印象的だったのは、作業を始める前の計画立てがしっかりしていること。

「まずこのファイルを作成して、次にこの処理を実装して…」と、タスクを細かく分解してから着手してくれます。何をやろうとしているのか把握しやすく、途中で軌道修正もしやすいと感じました。

Claude Code ― 長時間の作業が得意

Claude Codeの強みは、長時間の連続作業ができること。

複数のファイルにまたがるリファクタリングや、大きな機能追加でも、コンテキスト(会話の文脈)を保ったまま作業を続けてくれます。「さっき言ったあれ」が通じる安心感がありました。

Gemini CLI ― sudoが必要な場面でも作業が途切れない

Gemini CLIで便利だったのは、sudo実行時にCtrl+Fでターミナルにフォーカスが移り、パスワードを入力できること。

他のツールだと、管理者権限が必要なコマンド(パッケージのインストールなど)で作業が止まってしまうことがあります。Gemini CLIはターミナルへのフォーカス切り替えに対応しているため、パスワードを入力してそのまま作業を継続できます。環境構築を含むプロジェクトでスムーズに進められました。

また、私が使っていた当時は無料で利用でき、気軽に試せたのも大きなポイントでした。

ツール特徴
Codex CLI計画立てが丁寧で、タスク分解が明確
Claude Code長時間作業でもコンテキストを維持
Gemini CLIsudo時にターミナルへフォーカス移動、当時無料

やってみてわかった3つのこと

1. 「何を作りたいか」が一番大事

AIコーディングツールは、確かにコードを書いてくれます。でも、作りたいものが明確でないと、AIも困ってしまうのです。

「なんかいい感じのアプリを作って」ではなく、「地図上の口コミをタイムライン表示したい」「AI画像で伝言ゲームを作りたい」のように、具体的なビジョンを持つことが何より重要だと実感しました。

AIは優秀な実装者ですが、あなたの頭の中にあるアイデアを勝手に引き出してはくれません。

2. ハードルは確実に下がっている

以前なら「GUIアプリ?難しそう」「API連携?よくわからない」と尻込みしていたようなプロジェクトも、AIのサポートがあれば挑戦のハードルが格段に下がります

わからないことがあれば、その場で質問できる。エラーが出たら、エラーメッセージを見せれば解決策を提案してくれる。一人で調べながら進めていた頃と比べると、学習コストが大幅に削減されました。

もちろん、AIが生成したコードをそのまま使うのではなく、何が書いてあるのか理解しようとする姿勢は大切です。でも、「とりあえず動くものを作って、後から理解を深める」という学び方が可能になったのは大きな変化だと思います。

3. とにかく出して、公開しておくことが大事

4つのアプリを作ってみて、一番強く感じたのは「完璧を目指して手元に置いておくより、不完全でも公開する方がいい」ということ。

GitHubにリポジトリを作って公開しておけば、自分の振り返りにもなるし、同じようなことをやりたい誰かの参考にもなるかもしれません。worklog-mcpなんて「他にもっといいものがありそう」と思いながら公開しましたが、作る過程で学んだことは確実に自分の糧になっています。

完成度を気にして公開をためらうより、「作った」「公開した」という事実を積み重ねていくこと。それが次のアイデアや、新しい挑戦につながっていくのだと実感しました。


まとめ:AIでできるようになったことは、とにかく試してみる

2025年は「AIコーディング元年」とも呼ばれ、Claude Code、Codex CLI、Gemini CLIをはじめとするAIコーディングツールが急速に進化しています。

Excel VBAしか触ったことがなかった私が、PyQt6のGUIアプリ、MCPサーバー、Google Maps APIを使ったWebアプリ、Next.js + Supabaseのマルチプレイヤーゲームを作れた――これは、AIコーディングツールがなければ絶対に実現できなかったことです。

これらのツールは日々アップデートされており、私が体験した時点とは状況が変わっているかもしれません。でも、だからこそ「今、自分で試してみること」に価値があると思うのです。

記事を読んで「へぇ」と思うのと、実際に手を動かして「なるほど、こういうことか」と体感するのとでは、得られるものがまったく違います。

もしこの記事を読んで「自分も何か作ってみようかな」と思ったら、ぜひ挑戦してみてください。最初から大きなものを目指す必要はありません。小さなツール、ちょっとした自動化、身近な不便を解消するアプリ――なんでもいいのです。

AIコーディングツールは、あなたのアイデアを形にする強力なパートナーになってくれるはずです。


作成したアプリ一覧

アプリ名概要リポジトリ
SQLiteViewSQLiteデータベースビューア(GUI)GitHub
worklog-mcpAIアシスタント用作業記録サーバーGitHub
map-reviews-timelineGoogleマップ口コミタイムラインGitHub
Visual EchoAI画像伝言ゲームGitHub

参考情報

※各ツールの機能や料金体系は頻繁に更新されています。最新情報は公式サイトでご確認ください。

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