2026年9月2日に、比較サイト kurabebako(比べ箱) を立ち上げました。
普通のサイト立ち上げと違うのは、記事の企画・調査・執筆・検証・公開までを AI(Claude Code)に委任している ことです。私がやるのはインフラの用意と方針の決定、それから「AIには渡せない操作」だけ。記事本文は1文字も書いていません。
これは「ブログ運用とアフィリエイトをAIに委ねて、どこまで収益化できるか」を確かめる実験で、経過はこのブログで公開すると最初に決めました。この記事はその第1回、最初の1週間のログです。
なお、AIが作業するための「机」をどう用意したか(公開用と作業用でリポジトリを分けた話)は別の記事にまとめています。ここでは結果と、やってみて分かったことに絞ります。
この実験の設計
始める前に、AIと一緒に VISION.md という1枚の文書を書きました。何を目指し、何をやらないか、いつ何で判断するかを先に固定しておかないと、AIも私も途中でぶれるからです。
役割分担
| 担当 | やること |
|---|---|
| 人間(私) | ドメイン取得、ホスティングの設定、方針の決定、アカウント作成・カード登録・利用規約への同意、本番への push |
| AI | 記事のネタ探し、公式ドキュメントの調査、実際にツールを動かす検証、執筆、内部リンク、運用ルールの整備 |
「アカウント作成とカード登録は人間」というのは、最初から決めていたわけではありません。AIの側から線を引いてきました。AIが単独でアカウントを増やすと、運営者名義の契約を本人の承認なしに増やすことになる、というのが理由です。後述しますが、この手の「AIが自分で引いた線」が1週間で何本も出てきました。
勝ち筋の仮説
サイトのコンセプトは「比べたものを箱に入れておく」です。
- 扱うのは AIツール・開発環境・CLI・SaaS・サーバーの比較
- 「使ってみた感想」を名乗らず、料金・無料枠・制約・前提条件を同じ型の比較表に揃える
- AIが実際に動かして確認できる対象だけ を扱う。触れないものはレビューしない
最後の1つが差別化の核です。各記事の比較表には、対象ごとに「実行」(AIが実際にインストール・API呼び出しをして確認した)か「仕様」(公式ドキュメントで確認しただけ)かの区分を付けています。記事の主役は必ず「実行」で確認したものです。
やらないこと
- 医療・薬・健康・金融・保険・転職といった YMYL 領域は一切書かない(サンプル記事にも混ぜない)
- 物理ガジェットなど、AIが触れないもののレビュー
- 記事の量産。Google の「スケールされたコンテンツの悪用」ポリシーに触れるので、質を優先する
判定基準
新規ドメインは3〜6ヶ月インデックスも収益もほぼゼロが普通なので、短期の数字で方針を変えないことにしました。
| 時期 | 見るもの |
|---|---|
| 3ヶ月 | インデックス数、クロール状況 |
| 6ヶ月 | 検索流入の有無、上位表示できたクエリの傾向 |
| 12ヶ月 | 収益。ランニングコストの回収と CV 1件以上で継続 |
ランニングコストは、ドメイン代が年約1,600円、ホスティングは Cloudflare Workers の無料枠内でゼロ、検証用 VPS の時間課金が月に数十円。合計で月150〜200円ほどの見込みです。
正直なところ、12ヶ月でこれを回収できるかどうかは「成功の基準」ではなく「実験が破綻していないことの最低ライン」です。これを下回ったら継続しない、という撤退条件として置いています。何をもって「うまくいった」と言うかは、6ヶ月時点の検索流入の傾向を見てから決めるつもりです。今の段階で決めても、根拠のない数字になるからです。
1週間の結果
数字だけ先に並べます。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 公開した比較記事 | 6本 |
| サイト本体のコミット数 | 43 |
| AIが実際に動かして「実行」区分にした対象 | 13 |
| 検証用 VPS の実際の請求額 | 1.65円 |
| Search Console の初観測(9/2〜9/4 の3日分) | 表示10回、クリック1回 |
| 収益 | 0円(アフィリエイトリンク自体がまだ1本もない) |
公開した6本はこちらです。
- 静的サイトの無料ホスティング 5 社比較(9/2)
- 国内 VPS 5 社の最小プラン比較(9/2)
- 死活監視の無料枠 5 つを比較(9/3)
- 国内の共用レンタルサーバー 5 社比較(9/5)
- シークレット管理 CLI 6 つ比較(9/5)
- メール送信 API 5 つの無料枠比較(9/8)
「実行」区分の裏取りとして、AIが実際にやったことを並べると次の通りです。
- Terraform で ConoHa VPS を立てて計測し、削除
- UptimeRobot と Checkly に監視を作って削除
- エックスサーバーのお試し中に、API キーで cron や SSH 鍵を作って削除
- Bitwarden や Doppler など6つのシークレット管理ツールに、同じ5手順を流す
- Resend で送信ドメインの登録から DNS 設定・認証・送信・削除までを通す
私が触ったのは、それぞれのサービスのアカウント作成と、API キーの発行までです。
AIに任せてみて分かったこと
ここからが本題です。1週間で私の時間が一番かかったのは、記事を確認することではありませんでした。
「書かせる」より「止める仕組み」に時間を使った
最初の2日で、記事の型(見出しの順番、比較表の7列、出典の書き方)を決めました。ただ、ルールを文書に書いただけでは守られません。AIは前回の会話を覚えていないので、次のセッションでは平気で型を崩します。
そこで、型の違反はすべて ビルドが止まる ようにしました。
- 必須の front matter が無い、見出しの順番が違う、比較表の列が7つでない
- 対象ごとの「実行 / 仕様」の区分が無い
- 出典の行末に確認日が無い、記事の最終確認日が出典の確認日より古い
- アフィリエイトリンクがあるのに PR 表記が無い、リンクより後に PR 表記がある、台帳に無い案件 id を参照している
- 公開日が未来になっている(後述)
これは「AIを信用していない」というより、ルールの置き場所を会話から機械に移した、という話です。人間の新人に対しても同じことをすると思います。チェックリストを渡すより、CI で落ちるほうが確実に守られます。
AIは自分で手順書とルーチンを作った
意外だったのはここです。「記事を書いて」以外の指示をほとんどしていないのに、AIは運用の仕組みを自分で整えていきました。
- 判断の記録
LESSONS.md。「却下した案 / 決め手 / 覆す条件」の3項目で追記専用。1週間で20エントリ - 記事候補のスコアリング。裏取り・実行・収益・需要の4軸を0〜2点で付けて合計8点満点。6点以上で調査に昇格、3点以下で却下
- ネタ探しのレンズを曜日で切り替える運用。月曜は無料枠の棚卸し、木曜は「アフィリエイト案件がある領域から逆引き」、日曜は週次まとめで「次に書く1本」を決める
- 10本の定期タスク。毎日のネタ探し、毎週の執筆、月初の Search Console 集計、毎月の出典の再確認、毎月の方向性見直し
- 撤収手順
teardown.md。外部サービスに何かを作るたびに「消し方」を1行足していく
特に撤収手順は、私が言い出していたら後回しにしていたと思います。AIは「サイトを畳むときに外側に何が残るか」を、作ったその場で書き足しています。死活監視を消す前に DNS を消すと通知が飛び続ける、といった順番まで書いてある。
人間に残った仕事は「アカウント」「カード」「push」
1週間終わって振り返ると、私の作業はほぼ3種類に収束していました。
- サービスのアカウントを作り、API キーを発行して 1Password に入れる
- 支払い手段の登録や、無料お試しの申込み・解約
- 本番への push
3 は意図的に人間に残しています。このサイトはプレビュー環境を意図的に閉じていて、main への push がそのまま本番デプロイです。AIはローカルで draft = true のまま記事を置き、ビルドを通すところまでやる。公開はフラグを倒すコミット1つで、それを push するのは私。ここが最後の関門です。
1 と 2 は「AIには渡さない」と決めた線です。認証情報は 1Password のサービスアカウント経由で環境変数に注入していて、AIの出力に値が一度も出ないことを確認しています。Terraform の apply から destroy までを通しても、AIが見たのは「値の長さ」だけでした。
詰まったのは、検索順位より地味なところだった
「AIにブログを書かせる」と聞くと、文章の質や SEO が問題になりそうですが、実際に詰まったのはインフラの細部でした。
- 未来日付の記事が消えた。 Hugo は公開日が未来の記事を、エラーも警告も出さずにビルドから外します。ページ数が減ることでしか気づけない。今は「draft でないのにビルド対象に入っていない記事」があるとビルドが止まるようにしてあります
- 消した記事が本番に残った。 ホスティング側が前回のビルド出力をキャッシュから復元するので、削除した記事の HTML がそのまま再アップロードされていました。ビルド前に出力ディレクトリを消すように変更
- VPS 作成直後の apt が10分待たされた。 初回起動で unattended-upgrades が237パッケージの更新でロックを握っていた。ロック解放を待ってから apt を呼ぶ形に
- 画像生成ツールが権限昇格を要求して止まった。 AIは案内された回避フラグ(全ツールの自動承認)を使わず、Pillow の図形描画で同じ仕様の OGP 画像を作る方に切り替えました
- http と https が別 URL として Search Console に出た。 平文の http が 301 を返さず本文を返していたため。Cloudflare の Always Use HTTPS を有効化
どれも「AIだから起きた」問題ではありません。ただ、AIが自分で原因を特定して、直し方を LESSONS.md に「覆す条件」付きで残していったのは、人間のチームでもなかなか揃わない記録だと思います。
AIが自分で線を引いた場面
冒頭で触れた「AIが自分で引いた線」を、いくつか具体的に挙げます。
- 1本目の記事で、全対象を「実行」区分にするために無料アカウントを5つ作る案を、AIが自分で却下した。理由は「運営者名義のアカウントを本人の承認なしに増やすことになる」から。結果、5対象中4対象が「仕様」区分になった
- メール送信 API の記事で、Resend の無料枠(1日100通)を実際に送り切る案を却下した。上限に当たったときの応答形式は、レート制限(10 req/s)で 429 を取れば足りると判断した
- 死活監視の記事で、Uptime Kuma を VPS に立てる案を却下した。ローカルの Node.js で起動から削除まで費用ゼロで通り、VPS で得られる追加情報は公式 wiki に書いてあることだけだった
「もっとやれるのにやらない」判断を AI がしている、というのは始める前に想像していなかった光景です。
まだ分からないこと
正直に書くと、実験の核心はまだ何も分かっていません。
- 検索流入が来るかどうか。3日分で表示10回はほぼノイズです
- 収益が出るかどうか。ASP への申請もこれからで、アフィリエイトリンクはまだ1本もありません
- 「AIが実際に動かした比較」が、既存の比較記事より検索で評価されるかどうか
分かっているのは、1週間で6本の比較記事と運用の仕組みが揃い、私の手を離れて回り始めた、というところまでです。
次の記事は、ASP の申請が通ってアフィリエイトリンクを載せた時点か、3ヶ月のチェックポイント(インデックス状況の確認)のどちらか早いほうで書くつもりです。
参考文献
- kurabebako
- kurabebako – このサイトについて(運営方法と検証区分の説明)
- kwrkb/kurabebako(GitHub)(サイト本体。
VISION.md/PLAN.md/LESSONS.mdはここに置いています) - Cloudflare Workers – Static Assets
- Hugo

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