はじめに
Apple Silicon搭載のMacでLinuxを動かしたいと考えている方は多いのではないでしょうか。本記事では、ARM版のManjaro LinuxをUTM仮想環境で動作させる最速セットアップ方法をご紹介します。
従来のUbuntu Live経由の方法(30〜40分)と比較して、わずか15〜18分で環境構築が完了する画期的な手順です。複雑な変換作業を1段階に簡略化し、初心者の方でも確実に成功できるよう詳細に解説します。
必要な環境と前提条件
システム要件
| 項目 | 要件 | 備考 |
|---|---|---|
| Mac | Apple Silicon (M1/M2/M3) | Intel Macでは動作しません |
| メモリ | 8GB以上推奨 | VM用に4GB割り当て |
| ストレージ | 空き容量20GB以上 | イメージ変換に必要 |
| UTM | 最新版 | 公式サイトから入手 |
事前準備
# Homebrewがインストールされていない場合
/bin/bash -c "$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/Homebrew/install/HEAD/install.sh)"
# QEMU(変換ツール)のインストール
brew install qemu
セットアップ手順(最速15分)
ステップ1: Manjaro ARMイメージのダウンロード
Manjaro ARMの公式イメージをGitHubリリースページから入手します。
# 最新版のURLを確認して置き換えてください
MANJARO_URL="https://github.com/manjaro-arm/generic-efi-images/releases/download/23.02/Manjaro-ARM-kde-plasma-generic-efi-23.02.img.xz"
# ダウンロード(約5分)
curl -L "$MANJARO_URL" -o manjaro.img.xz
ステップ2: イメージの解凍
# XZ形式を解凍(約1〜2分)
xz -d manjaro.img.xz
ステップ3: Parallels形式への変換【重要ポイント】
ここが最大の簡略化ポイントです。従来の2段階変換を1段階で完了させます。
# RAW形式からParallels HDD形式へ直接変換(約2〜3分)
qemu-img convert -f raw -O parallels Manjaro-ARM-kde-plasma-generic-efi-23.02.img Manjaro-ARM.hdd
なぜこの方法が速いのか?
従来のqcow2経由の変換では、RAW→qcow2→parallelsという2段階の変換が必要でした。しかし、qemu-imgは実はRAWからparallels形式への直接変換をサポートしており、中間形式を経由する必要がありません。
ステップ4: UTMでのインポート
- UTMアプリケーションを起動
- 「Create a New Virtual Machine」を選択
- 「Emulate」を選択
- 「Custom」→「Import Existing Drive」を選択
- 先ほど作成した
manjaro.hddを選択
UTM推奨設定
| 設定項目 | 推奨値 |
|---|---|
| アーキテクチャ | ARM64 (aarch64) |
| メモリ | 4096 MB以上 |
| ブート | UEFI |
| ディスプレイ | virtio-gpu-pci |
ステップ5: 初回起動後の必須設定
初期設定(ユーザー作成、ロケール設定など)完了後、必ず以下のコマンドを実行してください:
# GRUBブートローダーの再インストール
sudo grub-install --efi-directory=/boot/efi
sudo grub-mkconfig -o /boot/grub/grub.cfg
# システムを再起動
sudo reboot
⚠️ 警告: この手順を忘れると、次回起動時にブートできなくなる可能性があります。
ワンライナースクリプトで完全自動化
以下のスクリプトを使えば、ダウンロードから変換まで完全自動化できます。
#!/bin/bash
# manjaro_utm_quicksetup.sh
# Manjaro ARM を UTM に最速セットアップ
set -e # エラーで停止
MANJARO_VERSION="23.02"
MANJARO_URL="https://github.com/manjaro-arm/generic-efi-images/releases/download/${MANJARO_VERSION}/Manjaro-ARM-kde-plasma-generic-efi-${MANJARO_VERSION}.img.xz"
OUTPUT_NAME="Manjaro-ARM-${MANJARO_VERSION}"
echo "━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━"
echo " Manjaro ARM UTM セットアップ"
echo "━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━"
echo "📥 [1/4] ダウンロード中..."
curl -L "$MANJARO_URL" -o "${OUTPUT_NAME}.img.xz"
echo "📦 [2/4] 解凍中..."
xz -d "${OUTPUT_NAME}.img.xz"
echo "🔄 [3/4] 変換中 (raw → parallels)..."
qemu-img convert -f raw -O parallels "${OUTPUT_NAME}.img" "${OUTPUT_NAME}.hdd"
echo "🧹 [4/4] クリーンアップ..."
rm "${OUTPUT_NAME}.img"
echo "✅ セットアップ完了!"
echo "📍 次の手順: UTMでインポート → 初期設定 → grub-install"
手法別パフォーマンス比較
| 方法 | 所要時間 | 難易度 | 必要ツール | メリット |
|---|---|---|---|---|
| 新方式(本記事) | 15〜18分 | ★★☆☆☆ | qemu-img | 最速、簡単 |
| 2段階変換(旧方式) | 18〜22分 | ★★☆☆☆ | qemu-img | 安定性高い |
| Ubuntu Live経由 | 30〜40分 | ★★★★☆ | Ubuntu ISO | 汎用性高い |
| Parallels Desktop | 15〜20分 | ★☆☆☆☆ | 有料ソフト | GUI操作 |
トラブルシューティング
よくある問題と解決策
Q: 起動時に「No bootable device」エラーが出る
A: grub-installを実行していない可能性があります。ライブUSBから起動して修復するか、セットアップをやり直してください。
Q: 変換時にエラーが発生する
A: ディスク容量が不足している可能性があります。イメージファイルの3倍程度の空き容量を確保してください。
Q: UTMで「Import Existing Drive」が選択できない
A: UTMのバージョンが古い可能性があります。最新版にアップデートしてください。
他のディストリビューションへの応用
この手法は、RAWまたはIMG形式で提供されている他のARM Linuxディストリビューションにも応用できます。
# openSUSE Tumbleweed ARM
qemu-img convert -f raw -O parallels openSUSE-Tumbleweed-ARM.raw opensuse.hdd
# Fedora ARM
qemu-img convert -f raw -O parallels Fedora-ARM.raw fedora.hdd
# Ubuntu Server ARM
qemu-img convert -f raw -O parallels ubuntu-22.04-server-arm64.img ubuntu.hdd
まとめ
本記事では、Manjaro ARMをUTM上で動作させる最速セットアップ方法を解説しました。重要なポイントは以下の3点です。
- qemu-imgによる1段階変換で時間を大幅短縮
- 初回起動後のgrub-installを忘れずに実行
- スクリプト化による作業の自動化
この方法により、従来比50%以上の時間短縮を実現しています。Apple SiliconでLinux環境を構築したい方は、ぜひこの手順を試してみてください。
参考文献・出典一覧
本記事は2025年10月時点の情報に基づいています。ソフトウェアのバージョンアップにより手順が変更される可能性がありますので、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
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